103人が本棚に入れています
本棚に追加
お店の中はある程度落ち着いた雰囲気をもちながら、堅苦しさを感じさせない。
照明も程よく落ちていて、さすが学生や社会人成り立ての集まりとは違って、やはり場所もお店のグレードも違う。
もし、男性にデートだと言ってココに連れてこられたら女は喜びそう。
私は無意識に彼の姿を探してキョロキョロとしながら案内された部屋にたどり着くと、そこはVIPルーム。
中には既に多くの友人達が集まっていて、乾杯が終わっていた。
どうやら先に集まった人たちが待ちきれず、始めてしまっていたらしい。
「おいおい、勝手に始めてんな」
「巧、おせーよ。つーか、あいつもこれねーとか言ってるからさっさと始めた」
私たちが部屋に入ると真っ先に近づいてきたのは沼田宏明くん。
昔からちょっと不良っぽい?というのかな、いつも頭は金パツでちょっとガラの悪い感じ。
雰囲気は……今も変わりない。
でも、髪の色は昔よりほんの少しだけ明るさが抑えられた気がするけど。
「えっと、沼田くん?だよね」
「おっ、巧。こいつ誰だよ。ちょー可愛いじゃんか」
私をガン見しながら近寄ってくる沼田くんを小野寺くんが制する。
「こらこら、この子に手を出すとあいつが怒るよ」
「は、つーことは?」
こちらを見ている、もとい、睨んでいる沼田くんに思わず名前を名乗ってしまった。
「み、宮野薫です」
そして深くお辞儀をする。
頭を下げながらちらっと沼田くんを盗み見ると、申し訳ないけど彼の容姿は同い年には思えない。
そして、大柄な体と、ラフな格好はまるで、日曜日のお父さんのよう。
もちろん、髪の色以外は。
「へー、昔もそこそこ可愛かったけど、今は別格だね。大人の色気が出たって感じか」
「ど、どーも」
確かに今日は同窓会ということもあり、会社に行く時とは比べ物にならないほど、身なりに気を使ったんだけど、まさか大人の色気なんて言われるとは。
沼田くんの発言に苦笑いを浮かべながら、沼田くんに会釈し、遠くで呼ぶ昔の友人たちの側へ舞子と共に駆け寄った。
最初のコメントを投稿しよう!