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「悠宇くんは久しぶりだね!」
「おー、薫は相変わらず、眠そーな顔してるな。ちゃんと寝てるのかよ」
「寝てない」
「おいおい、そんな顔してると彼氏の一人や二人いつまでたっても出来ないぞ」
「悠宇、彼氏は一人で十分でしょ」
朱里とは普段から良く連絡を取っているけど、彼氏の悠宇くんとは会うのは久しぶり。
彼は私たちは同じクラスで、高三から二人は付き合っていた。
たまに喧嘩する二人だけどとっても仲が良くて、どちらか片方が相手に依存しすぎることはなくて、丁度いい関係を気づいているように他人の私から見てもお似合いのカップルでいつも羨ましく思っていた。
「それで、あっちにいる光司とは何か話した訳?あれ以来だろ?子供が出来たって言われた時以来」
そう、先ほどからこちらをちらちらと見ている人が居る。
それは私を裏切った光司の姿。
「別に何か話す事もないし、それに今見たらなんで好きだったのか分からないもん」
「お、薫いうねー」
「だって本当のことだもん」
「薫はやっぱり今は恋愛より仕事なんじゃない?」
「うーん、そうかも。今度もね、新規クライアントの案件やらせてもらえる事になってさ」
「やっぱり仕事の話してると生き生きしてくる。でも、光司くんの方は未練ありますって感じでこっち見てるようだけど?」
「そんなことないでしょ。可愛い奥さんと子供と楽しく暮らしてるよ」
私は運ばれてきたビールを勢いよく飲み、横目で光司の方を見た。
あの頃は本当にかっこ良くて、輝いて見えていたのに、今となるとその輝きは全く感じられない。
むしろ、この3年の間に何があったのかというほど、老け込んでいる気がした。
「そーいや、肝心のあいつが来てないな」
「え?」
私と朱里が同時に声を出すと、後ろから悠宇くんの問いに対する返事をする人が現れた。
「あいつって日向?」
ドキン。
日向。
声の方を振り向くと、そこには小野寺くんが立っていて、私の隣に座ってきた。
「おっ、巧!久々だな!」
「久しぶり、悠宇。変わらず沢村さんと仲良くやってるみたいだね」
「え?!小野寺くん?!ちょーかっこ良くなってるじゃない」
「ありがとう、沢村さん」
にっこりと微笑む小野寺くんを見て、朱里が興奮ぎみに私に肘で叩いてきた。
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