103人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと!小野寺くんいい感じじゃない?結婚しているのかな?」
小声で私に話しかけていたのに、朱里の質問に答えたのは小野寺くん本人だった。
「残念ながら、結婚もしてないし、彼女もいないよ」
「だって!薫チャンスじゃん」
「おいおい、朱里。落ち着けって」
興奮気味な朱里を悠宇くんがなだめる。
「だってぇー、そろそろ薫にもいい人見つかるといいなーって思ってた所だから、こんなにかっこいい小野寺くんならって思って」
「朱里!変なこというのやめてよ。小野寺くんも迷惑してるよ」
と小野寺くんを見て、同意を求めてみたけど、小野寺くんは私の方へと顔を近づけてきていた。
「俺は別にかまわないよ。むしろ光栄だし」
「え?」
ニッコリと微笑み、私を近距離で見てくるから、会社以外の人とこんなに近距離で男性を見るのが久しぶりで、思わず赤面してしまった。
「ほら!やったね薫!」
「ちょっ、朱里」
「でも」
喜ぶ朱里に向き直り、小野寺くんは嬉しそうな顔をしながら朱里に、いや、私に伝えた。
「宮野さんには俺よりもっと素敵な彼氏が近々できるから安心しなよ」
「お、さすが巧。断り方がスマート。残念だったな、薫。で、今じゃ世間で大人気の日向はどうしたんだよ」
「!」
ドキン。
また、彼の名が呼ばれるだけで、胸の鼓動が激しくなる。
「ああ、どうやら今日は収録があってこれなさそうだって言ってた。そのかわりここ全部おごりだって」
「まじで?!さっすが、儲かってるやつのすることは違うね、太っ腹だ」
「悠宇。なんか言い方がおやじっぽい」
「そーか?」
やっぱり来ていないんだ。
先ほどから彼の姿を探しても、見当たらなかった。
その事に残念な気持ちと安堵する気持ちが入り交じっていて。
だけど、来れないという言葉を聞くと、寂しい気持ちになってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!