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「おおー宮野、戻ったか。お前、入稿忘れてただろ?」
職場に戻ると、私と同期で一番仲のいい、てっちゃんこと峰岸哲也が話しかけてくる。
「そうなの!今からすぐに用意しなくちゃ!」
慌ただしく席に着き、真っ暗な画面に向かい合ったところで、椅子を滑らせながら、てっちゃんが私に近づき、顔の目の前にCD-Rを突き出す。
「じゃーん!」
「え?」
「ほら、入稿データ。用意しておいたぞ」
「まじ?!ありがとう、てっちゃん。さすがだね!!」
「今度、ビール一杯ね」
「よろこんで!」
というわけで、今日は金曜日ということもあり、さっそく仕事が終わった深夜2時からてっちゃんといつもの飲み屋に飲みに行く事になった。
「「かんぱーい!!」」
私たちは高らかに掲げ、一週間の苛立をぶつけるかのようにグラスを重ねた。
そして、一気に飲み干す。
「ぷっはー!やっぱ仕事終わりのビールはたまんないね!」
「みやのー、お前親父くさいぞ」
「いいじゃない、別に」
「やっぱお前に男ができない理由はそこだね。親父くさいところ」
「何よそれ。あ、すみませーん!ビールもう一杯」
てっちゃんの話に耳を傾けながら、近くを通った店員さんを逃すことなく注文をする。
「しかも、最近また服装とか気にしなくなってきてるだろ?」
「うっ。さすが、お気づきで。でもこれでも昔は可憐な少女だったんだよ」
「はいはい。それより、今日は皐月さんに捕まってたな」
「うん。もう、あんなに喧嘩するなら別れればいいのにね」
確かにって笑いながら、目の前にある唐揚げをおいしそうに食べる。
てっちゃんは昔からここの唐揚げが大好きなのだ。
「あはは」
「何?突然笑い出して。イヤラシーことでも考えてた?」
「違います!相変わらず、唐揚げ食べてる時のてっちゃんは幸せそうだなーって思って」
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