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ニコニコしながらてっちゃんを見つめていると、唐揚げを食べるのを止め、場の雰囲気が少しだけ変わる。
「てっちゃん?」
「あのさ、宮野」
「どーしたの?改まっちゃって。あ、もしかして彼女できたとか?やめてよー、皐月さんだけじゃなく、これからはてっちゃんののろけ話も聞かなくちゃいけないのかー」
一気に話して、新しく届いたビールを飲む。
私が冗談っぽく言って笑っているのに対して、てっちゃんはいまだに真剣な表情のままだ。
「違う。実は」
何時になく真剣で、いつもバカ話しかしていないからこんなてっちゃんは調子が狂う。
この空気に耐えかねて、冗談で場の雰囲気を戻さなくてはと、少し酔いが回ってきた頭で考えた内容は。
「もしかして、てっちゃん私が好きとか言う訳じゃないよねー、おやじっぽいし、てっちゃんと私なんて全然想像できないしあり得ないっしょ」
その言葉を言った瞬間、てっちゃんの眉毛が動いた気がした。
けど、次の瞬間いつもの笑顔に戻った。
「ばーか、誰がこんな女。同じ会社の中から選べって言われたら、宮野じゃなく花園さんを選ぶね」
「お、あの皆のアイドル花園さゆりちゃんを選ぶか。ま、てっちゃんならいけるかもね」
「まーな。俺イケメンだしね」
「イケメンというか童顔。大学生でも通じそう」
「制服着たら高校生でもいけるぞ」
「調子にのらないの!もう28歳のおじさんじゃない」
「何を!じゃ、タメなんだからお前はおばさんだな」
「私はまだぴちぴちのギャルだしー」
「……その発言、ヤバいな」
それから、会話が途切れることなく二人で話し続けた。
てっちゃんと話していると楽しくて、気がつくと夜が開けていた。
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