17人が本棚に入れています
本棚に追加
*
貴哉と知り合ったのは、かれこれ2年前になる。
職場の打ち上げが終わり、ほろ酔いで歩いていた帰り道。
夜風が気持ち良くてゆっくり歩いていた・・・・・のに私はコケてしまった。
「いたたたたた。せっかくいい気分だったのに。」
ペッタリ座り込むと、痛みと酔いが回った足はなかなか言うことを訊かない。
「この辺タクシーもなかなか通らないのにー」
手をついて、ヨイショと立ち上がろうとしていると
「大丈夫?」と、声をかけられた。
「あ。はい。多分、大丈夫です」
なんだか急に恥ずかしくなって、慌てて立ち上がろうとして、またよろける。
「大丈夫じゃなさそうだね。手を貸すよ」
腕を掴まれて、私はやっと立ち上がった。
「ありがとうございます。」
洋服を払って、顔をあげるとなんだか見たことがある気がする。
「あの・・・・」
「やっぱりわかんないか。俺、君の最寄り駅の駅員。」
苦笑しながら貴哉は言った。
私は頭の中で駅員の制服を着せ帽子を被せた。
「あー。私服だとわかんないもんですね。すいません」
「良いんだよ。今日はデートだったの?楽しそうな後ろ姿だったけど?」
「いえいえ。職場の打ち上げで。」
「そっかぁ。ところで歩ける?」
「多分。大丈夫かと・・・・」
ガクン・・・・
刺すような痛みが走る。
最初のコメントを投稿しよう!