写し鏡の月

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今度は貴哉が支えてくれたから転ばなかった。 「大丈夫じゃなさそうだね。」 「そうみたいです。」 痛みと困惑で泣きたくなって来た。 「ここから遠いの?タクシー拾って来ようか?駅まで戻ればタクシーまだいるだろうし。」 「え?でもそんな事まで・・・・」 「まさか歩けるようになるまでここに居るわけにいかないでしょ?ちょっと待っててね。」 貴哉は駅に向かって行った。一人になると挫いた足首とぶつけた膝がジンジンしていた。 (情けない。コケただけでこの有り様なんて・・・・) 程なくしてタクシーに乗った貴哉がやって来た。 「すいません。ありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか。」 「どうって事ないよ。もし気が済まないってんなら、そのうちアドレス、メモしてちょうだい。なーんてね。ははは。じゃ気をつけて。おやすみ。」 私をタクシーに乗せると、貴哉は外で電車を見送るような動きをしてみせた。 私はつい吹き出して、貴哉に手を振った。
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