写し鏡の月

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それから月に2~3度、食事と言っても、夜も遅かったので、軽く食べながら少しのアルコールというデートをした。 何度目かのデートの時、男女の関係になった。 貴哉の腕に抱かれているのは温かく幸せな時間だった。 ただ、付き合いが長くなるにつれて、少し不自然さが出てきて、一体なんだろうと思うようになって来た。 仕事中はもちろん殆ど返信はないのだけれど、休みの日は余計返信がないこと。 翌日が仕事であっても、休みであっても泊まる事はしないこと。 ―「翌日仕事の時、バタバタと出掛けられるとなんだか寂しいじゃん?」って言われてなんとも反論出来なかったけれど― そうして一年。 仕事で用足しに出かけた先でお昼を食べようとファミレスに入った。 注文し何気なく眺めた駐車場のファミリーカーから降りてきた貴哉。 そして、チャイルドシートから抱き上げられたまだ小さな子供。 嬉しそうに足をばたつかせている子供と格闘しながらしっかりパパの顔をしてた。 私は気付かれないように祈りながら、届けられた料理を味もわからず飲み込んで逃げるように店を後にした。
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