写し鏡の月

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不自然だと感じていたこと全てに合点がいった。 指輪をしていなかった事。 まさか家族がいるのに声を掛けてくるなんて思わなかった。 そんな思い込みから尋ねもしなかった。 休みが合わないから一日中二人で過ごせないのはしょうがないと諦めてた。 そんな自分に呆れた。 貴哉には何も言えないまま、悶々とした日々を過ごした。 「奥さん居るんだね。可愛い子供も・・・・私、全く気付かなかった。 鈍感過ぎて笑っちゃう。 知ってしまったからには、サヨナラをした方が良いのだと思う。」 何度貴哉にメールしようと思った事だろう。 けれど、その頃には好きになりすぎていた。 どうしたらいいかわからずに、貴哉からの誘いを何度か断っていた。 5度目の誘いを断って、一人家路についたある夜。 シャワーを浴びて一息ついて見るともなくテレビの前に座りボンヤリしていると、チャイムが鳴った。 千景? まさか貴哉? 一瞬戸惑いながらドアの前に立つとまたチャイムが鳴った。 私はドアチェーンを掛けたままドアを開けた。
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