写し鏡の月

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とりあえず食べながら聞いた話を要約すると、忙しくて連絡が来ないのだと思っていた彼氏に女が出来ていて、千景がかけた電話を彼女が受け「海希(かいき)さんならお風呂入ってますけど?」と、さも嫁さん気取りで対応された・・・・という事らしい。 「そんで、別れるの?」 とりあえず聞いてみる。 「黙って身を退くのもシャクに障るし、時系列を追って、どの時点から二股だったのか確かめたかった訳よ。あたしも腹が立つけど、彼女にも失礼な話じゃない?二股かけるような男だって事を知って置かないと彼女もまた傷つくかも知れないわけだしさ。」 「で、決戦したわけ?」 「うん。一昨日の夜、とりあえず会えるかメールしたら、短時間ならなんて言うわけよ。こりゃ彼女が夜に家に行くって約束なんかしてるのかって思った。で、彼んちの近くの公園に待ち合わせしたの。小さい公園だから、彼女が歩いて来るなら、あたし達の姿を見つける可能性がある。もちろんそれを期待してはいたんだけど。」 世にも恐ろしい修羅場を半分期待しているとは、そら恐ろしい。 しかし、陰険な事を嫌う千景らしい考え方だ。
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