写し鏡の月

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約束通り週末は千景に拘束された。 「家飲みしよー。愚痴聞いてよー」 と押しきられ、缶酎ハイやらワインやら買い込んで千景の部屋に入ったのは20時頃だったろうか? 千景の部屋に置いてある部屋着に着替え、乾杯した。 間もなく千景のボヤキが始まる。 適当に相づちを打ちながら夜も更けてゆき、気付くとワインのボトルは3本転がっていた。 「そろそろ寝ない?明日買い物も行くんでしょ?」 切り出しても、「まだ大丈夫だもんー」と、取り合わない。 やれやれと思いつつ、携帯を見るとメールの着信を知らせる点滅。 携帯を開くと貴哉(たかや)からだった。 [今週もオツカレサン! 暇なら会わない?] 一時間前の着信。 暇だとしても11時を回ってから呼び出し? 都合が良いときしか連絡を寄越さない男。 ただ、会いたくて待ち遠しくて切ない頃もあったけれど、今は違う。 強がって明るく振る舞っている千景がホントは辛くて一人で居たくないのがわかっているのに、ほっぽりだして会いに行く程の想いはない。 私は断りのメールも入れず携帯を閉じた。
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