Flag11―玄色―

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 相殺して消え去る風と魔法は見送らず、僕は言う。 「まあ、負けるつもりも、死ぬつもりも全く無いんだけどね」  益々、橙色の髪の男の表情が歪む。……なるほど、母上っぽい物言いだったかもしれない。  だけど、この位が僕らしくて丁度良い。 「チッ……〝ガング・ウィンダ〟」  僕は魔力を身に纏い、男の作り出した、口調に反して恐ろしく精密な風の槍を僅かな距離で見送る。  ヴァルとツカサ君をあんな状態にまでした何らかの力は、今までの様子から、ある程度離れていれば当たることはないと思われる。  故に、距離を取って戦おうと思ったのだが、そう甘くはなく、橙色の髪の男の繰り出す魔法は相当な練度だった。  とは言え、だ。予想もあくまで予想。合っているとは限らない。そもそも、ヴァルやツカサ君を一瞬であんな状態にした正体自体わからないのだ。それが魔法であるのか魔術であるのか、はたまた別の何かなのか、それさえもわかっていない。  なら、どうしようか。なんて自問をするけれど、思考時間は一瞬で、結局は単純だった。 「〝吹き飛ばせ(ラファル)〟」  広範囲に突風を広げ、橙色の髪の男の足止めをする。 「〝ディレクト・ウィンダ〟」  僕はそこへ、真っ直ぐ進む一本の風の塊を放ち、更に全身に風の魔力を纏って走り出した。 「チィ――ッ!」  逃れられないと理解したのか、橙色の髪の男は舌打ちし、僕の放った風の塊に手をかざす。  すると、風の塊は男に当たる直前に、透明な何かにぶつかったかのような動きを見せて消え去ってしまった。  だが、慌てない。この際に生まれた隙に、男まであと五メートル程の場所まで近付いていた僕は、愛剣を握っていない左腕を振り、鎧の一部を風の刃として放つ。  それに対して男は先程とは同様に防ごうとはせずに肩に傷を作りながらも避けた。  どうやら、連続では使わない、もしくは使えないらしい。  得た情報を呑み込みながらも、同時に、身体は休めず、追撃に入る。 「〝ガング・ウィンダ〟」  僕は風の槍を放ち、肩に傷を作ったばかりの男の動きを見ると、男は今度は魔法を使ってそれを防いだ。  ……妙だ。ツカサ君の時は避けようとはしなかったのにも関わらず、今回は防いでいる。……いや、今回だけではなかった。ヴァルが地属性の上級魔法を使った時は、さっき僕の〝ディレクト・ウィンダ〟を防いだ時と同じ様に防いでいた。
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