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となると、違いはなんだろうか? 正直あれだけ体を刺されたり斬られたりしているのにも関わらず、動きが鈍っていないというのは不死身のように感じてしまう。
しかし、防いだ。今、防いでいる。
そこで、ふと、あることに気付いた僕は、注意深く男の傷を見た。
本来、戦闘中に隙になる事はするべきではないのだが、今は特別だ。もしかしたら、勝てるかもしれない。
「〝ディレクト・ウィンダ〟」
僕はもう一度、風の塊を一本放つ。
対して男は身をよじり避けた。
しかし、僕はそこへ三度同じ魔法を発動する。
「ケッ……! そんなバカスカ使って大丈夫かよ。数打てば当たるモンでもねェだろうが」
「心配なんて呑気だね。だけどご無用だ。〝スペリア・ウィンダ〟」
「チッ……!」
大量の風の刃を伴う風の上級魔法を使い、僕は“無理矢理”男に透明な何かを使わした。
僕が男の傷を見て気付いた事、それは一つ一つの傷の大きさだ。僕が見た限り、男の身体には深さは関係無く、大きな傷は一つもなかった。
それともう一つ、男は不死身染みてはいるが、傷が直っていっているわけではない。
そして更に言えば、男は今まで一度も魔力付加も属性強化も使っていない。これはそれらを使わずに攻撃を防いでいる所から、何らかの理由により、使えないと見てよさそうだ。
以上の事から浮かび上がる可能性は、男が防ぐのは体の一部を失うような恐れのある攻撃であり、それ以外は防がない……いや、防ぎたくても防げない、という事だ。
ならば、僕にだって正気は十分ある筈。
「〝クルエル・ウィンダ〟」
風属性の最上級の魔法であり、現在僕が出来る風属性の最大規模の魔法だ。それを、僕は〝スペリア・ウィンダ〟を透明な何かで防いだばかりの橙色の髪の男へと向ける。
青白く輝く、五芒星の描かれた魔法陣からは、先程の風なんて比にならない程、酷く暴力的で、自分勝手で理不尽な風が吹き荒れる。
それが橙色の髪の男に近付くにつれて、その一瞬の間に、理不尽な風の一端は確実に、男の身に傷を増やしていく。
僕が魔法を発動したのは、橙色の髪の男が後手に回り、男の持つ何かで防がせた直後。
「だって、当てるのは一発で良いんだからさ」
故に、僕の予想が正しければ、男には防ぐ術は無い。
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