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その際、広げた腕のその先、黒い刃がさっきまでよりも太く見えたが、僕の見間違いではなかったようだ。
目を凝らすよりも先に、黒い刃は更に太さを増す。そこにはさっきまでとは比にならない程、魔力が集まっていた。
その膨大な魔力の量を見て、フードを被った男はここに来て漸く反応を示し、黒い靄のようなものを発生させると自身を包み込む。
と、同時に橙色の髪の男の前に同様の黒い靄のようなものが現れた。
すると、今さっき消えたフードを被った男が、橙色の髪の男前に現れた黒い靄のようなものから姿を見せた。
そして橙色の髪の男を庇うように立つフードを被った男は、直ぐ様、瞬間移動してきた時と同じ黒い靄のようなものを今度は大量に、前方に発生させる。
その瞬間、ツカサ君は魔力を集めた刃を横に一閃。
黒い魔力と靄のようなものは大きく音をあげ、周囲を巻き込みながらぶつかり、爆風を伴う衝撃を作り出した。
橙色の髪の男とフードを被った男の姿は、舞い上がった砂埃のせいで視界が不明瞭になってしまったため、直ぐには確認することが出来ない。
けれども、ツカサ君が再び腕を横に広げて、魔力を溜めるような素振りを見せたという事は、最低でも生きているという事なのだろう。
殺伐とした静けさが広がる中、緩徐な動きを見せているツカサ君の見遣る先で、襲撃者二人は姿を見せた。
橙色の髪の男は相変わらず酷い傷を負っているように見えるがしっかりとした足取りで、特に痛手となるような被害を受けた様子はない。
しかしもう一人、フードの男のフードはぼろぼろの布切れに成り果てており、隠されていたほっそりとした体型と、どこかスチュアートを彷彿とさせる黒い髪と黒い瞳をした顔が露になっていた。
けれども、それよりも僕の目を引いたのが、砂で少し汚れてしまっている彼の頬。別に多少砂が付着している位ならば、大して気に留める事ではないのだが、違った。
彼の左目の下には、大きなひび割れのようなものがあった。
そのひび割れが今出来たものなのか、はたまた以前からあったものなのかはわからないが、少しだけ、納得が出来た。
だが、僕の納得は少しだけ。予想の域からは出ていない。
僅かな魔力を地属性のものへと変換し、傷の酷いところへ纏わせて無理矢理立ち上がろうとするが、二本の足だけで支えようとすると大きく尻餅をついてしまう。
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