二人で濡れましょう

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 雨が降った──    昇降口で五月蠅い雨音を聞きながら、重い空を見上げる。   「外れた、な……」    天気予報では一日晴れだって言ってたのに、最後の授業が終わったと同時に降り出した。    っ……たく、当てにするんじゃ無かったよ。それとも、『ヨシズミ』予報を信じて、傘を持って来なかった僕が馬鹿だったのか?    何とかしないと、な……    小雨ならまだしも、この土砂降りじゃあ、絶対に濡れて駄目になる。   「このケーキ、一緒に食べたかったけど」   僕の右手に有る物は、二十日も前から予約を入れていたデコレートケーキ。    誕生日を迎える人物の名前と、僕からのメッセージが描かれている。   「さて、どうしよっかなっと」    受け取るのを待ち切れなくて、昼に一度学校を抜け出し、放課後まで職員室の冷蔵庫で保存していた。    子供だと笑われても良い。早く、笑った顔が見たかったんだ。  
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