二人で濡れましょう

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「走るか……そうすれば、何とかなるだろ」    さっきから何人ものクラスメイトが通るけど、声を掛けて来る者はいない。別に、誰かの傘に入れて貰うつもりも無かったし、誘われても断るつもりだった。    でもこの現実が、大切な人を、更に大切な人にする。この人しかいないと思わせる。   「急げば五分。ケースにブレザー掛ければ、間に合う!!」    そう見切りを付け、走り出す。    ──バシャ、バシャ。    水を跳ねる。      ──バシャ、バシャ。    校門を出た時には、靴下まで濡れていた。      ──バシャ、バシャ。    予想したより浸透が激しい。シャツが肌に張り付いて、気持ち悪くなる。      ──バシャ、バシャ。    この角を曲がれば……      ──ドンッ!!!   「がっ!?」   「きゃっ!?」    鈍い衝撃。    ……ぶつかった!?  
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