二人で濡れましょう

7/7
前へ
/9ページ
次へ
「やっぱり甘いよ。ほら、みつるちゃんも」    そう言うと、同じ指でクリームをすくい、今度は僕の口前に持って来た。   「食べて……」    こう言われて断る術を、僕はまだ知らない。   「んっ」    指を口に入れる。   「甘いね」   「でしょ?」    本当は雨に当たり過ぎたせいで、感覚等無くなっていたのだが、言わないで置いた。   「それじゃあ、風邪を引く前に帰ろ?」 「どいてくれないと、立てないんですけど」    言うと、慌てて僕の上から飛び退き、「はいっ」と手を差し伸べて来た。   「僕は良いですから、早く傘を差して下さい」    僕がそう言っても、差し伸べる事を止めない。   「ううん。一緒に濡れて帰ろう」    やっぱり勝てない。しかたなく手を取り、立ち上がる。   「一緒にお風呂入って、温まろうねー」     ──ッ!!?   「くっ、ははっ」    笑いがこみ上げる。やっぱり、勝てないなー。   「あっ、やっと笑ってくれたね、みつるちゃん!」    そんな無邪気な笑顔をされたら、嫌でも、この人に惚れてると確認させられてしまう。   「あーあ、真奈美さんと一緒にお風呂入るの楽しみだなー」   「わっ、冗談だよー」    雨は未だ止まらない。でも、今日の雨は好きになれるかも知れないと、少しだけそう思えた。     おしまい
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加