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「やっぱり甘いよ。ほら、みつるちゃんも」
そう言うと、同じ指でクリームをすくい、今度は僕の口前に持って来た。
「食べて……」
こう言われて断る術を、僕はまだ知らない。
「んっ」
指を口に入れる。
「甘いね」
「でしょ?」
本当は雨に当たり過ぎたせいで、感覚等無くなっていたのだが、言わないで置いた。
「それじゃあ、風邪を引く前に帰ろ?」
「どいてくれないと、立てないんですけど」
言うと、慌てて僕の上から飛び退き、「はいっ」と手を差し伸べて来た。
「僕は良いですから、早く傘を差して下さい」
僕がそう言っても、差し伸べる事を止めない。
「ううん。一緒に濡れて帰ろう」
やっぱり勝てない。しかたなく手を取り、立ち上がる。
「一緒にお風呂入って、温まろうねー」
──ッ!!?
「くっ、ははっ」
笑いがこみ上げる。やっぱり、勝てないなー。
「あっ、やっと笑ってくれたね、みつるちゃん!」
そんな無邪気な笑顔をされたら、嫌でも、この人に惚れてると確認させられてしまう。
「あーあ、真奈美さんと一緒にお風呂入るの楽しみだなー」
「わっ、冗談だよー」
雨は未だ止まらない。でも、今日の雨は好きになれるかも知れないと、少しだけそう思えた。
おしまい
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