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私には妹がいる。生後半年のまだほんの赤ん坊である。
母は大事そうに妹を胸に抱き横に座っていた。
母は少しふっくらした優しそうな顔である。
「見て、よく眠ってる。美華はお姉ちゃんなんだからしっかりしなきゃね。」
そんなよく聞くフレーズを言われ、少し嫌な気持ちになった。
私は六歳で現在小学校一年生である。
小学校から帰ると母が作ってくれるパンケーキを喜んで食べるのが好きだった。
しかし妹がウチに来てから
「ごめんね、優華が泣きやまなくて、今日おやつ作れなかったの。」
そんな言葉が多くなった。
お風呂も私と一緒に入る機会が減った。寝るときも母が夜泣きをする妹のところへ行き、私のそばからいなくなった。
時々学校へ迎えに来てくれて一緒に川辺を歩いていたが、それもなくなった。
私の存在が薄くなった気がした。
眠っている妹の顔を見ると確かに可愛かった。私がお姉ちゃんなんだよね。
そう自分に言い聞かせるが、やっぱりどこか憎かった。
ある日、学校で初めての参観日があった。その日はひどい雨であった。
母は「必ず行くからね。」と言っていたが、来なかった。
また妹だ。そう思った。
私には父親がいなかった。妹が産まれ、すぐ電車事故に巻き込まれ死んでしまったのだ。
そのため、参観日には誰も来なかった。
友達に
「美華ちゃんのお母さんは?」
と聞かれた。
私はとっさに
「いない。死んだの。」
と応えてしまった。
その日以来、何かが変わった。
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