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よく使う見慣れた駅だ。
此処から急行一本で乗り換えることなく最寄り駅までつける。
いや、そんなことはどうでもよくて。
おかしい。 此処まで歩いてきた記憶がない。
かといって、意識を飛ばすくらいに酒を飲むほど俺は酒に強くないし
夢遊病の気もない。
だとしたらただ、寝ぼけていたのだろうか。
まるで、ずっと此処に立っていて、たった今意識を取り戻したような感覚だけが俺の中に残っていた。
「っかしいなあ」
覚醒した頭で悩むも、どうもやはり、思い出せない。
とりあえず、電車がくるのに時間がかかるようだ。
俺は座りたがるいつもの癖で、待合室へと向かった。
なんで此処に居るのか思い出せないけれど何はともあれ電車がきたらすぐに帰ろう。
同居してる彼女が待ってる。
寂しがりやだからな、あいつは。
そう思い待合室の前に立つと
自動ドアが音もなく開いた。
そしてそのまま近くにある席に座ろう―…としたのだけれど
すでに待合室に居た三人が、どうも浮かない顔をしているのが気になり、立ち止まってしまった。
いや、普段はそんなもん知ったこっちゃないのだが
あまりにも深刻な様子だ。
なにかあったのだろうか?
すると、その三人の中の一人。
長い黒髪をお化けのように垂らしていた女が、妙にキンキンする声で俺をみて叫ぶではないか。
「アンタどうやって入ってきたの!?」
美人だ。だけどヒステリックの気があって、全然好みじゃない。
「いやあ、どうやって て聞かれても」
俺はそう答える。
普通に入ってきただけなんだけど
としか言いようがないからだ。
大体、なんでそんなこと聞いてくるんだ?
ああ、自分が入るときに自動ドアのセンサーが不具合だったとか
そういうことだろうか。
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