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俺が座ることも出来ず、うろうろしていると、女の隣に座っていた男が黒縁メガネの奥からのぞく目で、こちらを見た。
「お前、今待合室から出てみろよ」
その言い方はまるで、出来るものならやってみろ
とでも言うかのようだ。
ただ自動ドア開けるだけだぞ?
そんなに人として認知されなかったのか? お前らは。
そう言おうとして俺はしぶしぶ自動ドアに手をかざした。
すると
「あれ」
すんなり開くはずの自動ドアが、あかない。
立つ位置を変えたり、
手をゆっくりかざしたり
色々したが無反応だった。
なんだ、この待合室 反応悪すぎだろう。
「センサーが反応しないだけじゃない。
俺たちはアンタが来る前にすでにドアに体当たりしたり、持ってる一番硬いものでドアを殴ったりしてみたが
ドアにひびが入る気配すらないのさ。
俺たちは閉じ込められたってわけ」
男のその言葉に
男のとなりにいたヒステリックな女は泣きそうになり
その前に座っている大人しそうな女性もどこか悲しそうな顔をした。
「そんなことって、ないだろ。
こんな薄いガラスドアが?
ああ、そうだ。駅員が通らないのか? 通るだろ
事情を説明すれば―…」
俺がそういいかけると、ヒステリック女は黙れとでも言うかのように壁を叩いた。
「さっきから誰もこないわよ!
ついでに言うと電車もね!
もーやだあ! 帰りたい!
じゃないと絶対健君私がいない間に浮気するもん!」
とりあえずこの女に話を振るのは避けよう。
そう思い俺は自動ドアに懇親の力を入れて拳をぶつけた。
なるほど。男の言うとおりびくともしない。
というか、ドアが頑丈―…というよりは、空気を殴っているような違和感だけがあった。
突然、 駅のホームに居た俺。
現実味のない密室の待合室
一体俺たちに何が起こってるんだ?
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