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「寝れねーなぁ」
実は昨日もあまり寝ていない。
ゆっくりと寝たいのだが、どうしても寝れない俺は部屋から廊下に出る。
……何故か謁見の間の隅ににキッチン、冷蔵庫、こたつとテレビがあるのだがそこまでは遠い。
部屋から出て、左を進んで突き当たりから曲がると玄関。
左が城の出入口、右が謁見の間に繋がってる。
寒い時や暑い時は扉を閉めてエアコンをつけるらしいが、今は暑いし開けっ放しのはず。
夜中も開けっ放しなので、行ってみるかな。
「ん?」
昨日は侵入者のせいで寝れなかったが、今日はすでに誰か居るようで、謁見の間改めリビングの前に行くと何者かがテレビを見ている。
「……母さん」
後ろから近づくと、ビクッ! と驚いて体を跳ね上がらせる母さん。
「やーね、どうかしたの? こんな時間に」
「勇者にディープキスされて寝れなくて……って余計に寝れないものを」
何を見ているのかと思ったらホラー映画を見ていた。
少女が館の中を歩いているシーンで、いつなにが飛び出してくるかわからない。
「それ消してさ、ゆっくり喋ろうぜ」
「…………ごめんなさい、いざ二人きりになると何を喋ればいいのかわからないわ。それに、今更親の面はしたくないわ。今まで育児すっぽかしてたんだから」
俺は黙って、その場を離れる。
しかし謁見の間を出る前に振り向いて、
「俺は、アンタが俺の母さんだと思ってるから」
そう呟いた。
聞こえたかどうかは知らないが、恥ずかしいから聞こえないでいい。
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