第一章:邂逅の日

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【1】  ケージ・ルートヴィヒ・ラインハルトは、ジュブナイル大陸のノベラ・イズ公国北部に生まれた。  家は古くから国に仕える中級貴族だ。  貴族、などと一括りにしているが、領地は少なく金が余るほどあるわけでもない。  戦時に先駆けとして挙兵し、公国のため戦う家系であり、代々その気質は軍人だ。  贅沢するための金を持たないのが家訓だった。  ケージに金への執着がないのも、それが起因なのだろう。  そして衣食住に困ることがなかったのは、曲がりになりにも貴族という地位にいたからだと、彼は早くから実感していた。  自分は恵まれている。  そう理解していたからこそ、武人になるための苛烈な鍛錬に耐えることができた。  幼いケージが武術と魔法を教わったのは、恵聖館(けいせいかん)というラインハルト家と遥か深遠より関わりのある道場だった。 『武人としての高潔なる魂は、日々の鍛錬によってのみ昇華される』  そのような教えの下、ケージは日々の鍛錬に勤しんだ。  体術や剣術、魔術のほか戦術や歴史まで、多くのことをそこで学んだ。
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