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いつも通りの光景だった。
先輩風を吹かせる者が『鍛錬』と称して後輩を裏手に呼び出し、無理な運動を強要する。
ただケージは〝少しばかり〟強く、先輩からそのような仕打ちを受けずに済んでいた。
だからといっては驕りも甚だしいが、ケージは『鍛錬』を目撃するたび先輩に歯向かっていた。
「まったく……バカはどっちなんでしょうか」
ケージは頭を振り、落胆をあらわにした。
するといつもなら『なんだとぉ!?』などと先輩は声を裏返して怒るのだが、そのときは違った。
「あっ……あ……?」
そろいも揃って口をあんぐり開け、目を瞬かせていたのだ。
「……?」
予定通りの反応を期待していたケージはやや腰砕けになる。
しかしすぐさま先輩の視線の先が、自分を飛び越えていることを察し、ケージはそのほうを見遣った。
「うわっ!?」
同輩が情けなく叫ぶ。
辛うじてケージは声を出さずに済んだ。
雪の積もった針葉樹の下、人がいた。
闇夜の深い黒と同じ色をしたマント。
白髪を後に撫で上げ、口には長い髭をはやしている。
顔には年月を現すように、しわが張り巡らされていた。
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