第一章:邂逅の日

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 なんとも異様な佇まいだった。  なによりケージが驚いたのは身なりではなく、〝いつの間にかそこにいた〟ことだった。  いっさい気配を感じさせず、背後をとられていたことに、心霊現象を目撃したかのような衝撃を受けていた。 「先輩この人……っていない」  ケージが振り返ると誰もいなかった。  逃げたのだ。やはり素晴らしい先輩である。 「けけけけケージくん」 「落ち着け。……あー、私はケージ・ルートヴィヒ・ラインハルトと申しますが、どちら様でしょうか?」  誰何(すいか)すれば、老人は片眉を上げた。 「突撃家系と聴いていたが、なるほど礼儀はあるようじゃな。なにワシはシュヴァルツの知り合いじゃ」  シュヴァルツとは、恵聖館でケージたちを教える先生だった。 「……いつからそこに?」 「少し前じゃよ。我らが公国の歴歳から見れば数瞬前じゃ」  ケージは対応に窮した。初対面にしては理解しがたい言動だった。  怪訝顔をしていると、老人が笑う。 「道場に行こうか。外は冷えるからのお」  悠然たる物腰で老人は、ケージと同輩の横を歩きぬき、立ち止まった。 「あ……」  そこでケージは気づいた。
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