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老人が纏う漆黒のマント。
その背中に彩られた金色の刺繍に釘付けになった。
「ケージくんあれって確か……」
「……」
刺繍は巨大な剣がドラゴンの口に突き刺さっている様子を簡略化して描いていた。
公国創成期、初代公王たる大公王がノベラ・イズの地を破壊し続けた黒龍(こくりゅう)と戦い、その最後の一撃を表しているのだ。
十年そこらしか生きていないケージや同輩も、道場で教わっていたから知っていた。
さらに漆黒のマントを羽織る老人が何者なのかも、察するのは容易だった。
「極位……」
無意識にケージは呟いていた。
「……礼儀だけかと思ったが、ちゃんと勉学も励んでいるようじゃな。さすがシュヴァルツが推(お)すだけはある」
老人がくぐもった笑いを漏らし、
「ワシはいかにも、極位極北にして公国に仕える討滅者――」
「第95代目『極北の討滅者』じゃよ」
それがケージと極北の討滅者との邂逅だった。
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