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「赤ちゃん……できたみたいなの。」
「えっ?」
沙耶からの突然の報告。
妊娠と聞いて俺は考える。
沙耶だけじゃなく、子供まで不幸の道を歩ませることになってしまう。
いっそ全てを捨てて、逃げ出してしまおうか。
愛する人も、新しい命も……。
一度幸せを手にしたら、放したくなくなるに違いない。
俺は、沙耶にこう言った。
「俺は……沙耶に幸せになってほしいと思ってる。お腹の子にも。
でも、俺が父親じゃ、幸せにしてやれないかもしれない。」
沙耶はしばらく黙った後、こう言った。
「私はこの子がいとおしくて仕方がないの。
この子のためなら何だってできるわ。
そしてこの子と私の人生にはあなたが必要なの。」
そう言われてまた少し考えた。
俺の死因はわからない。
突然死んでしまうかもしれない。
だが、いつ死ぬかはわかるじゃないか。
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