寿命払い(short ver)

11/19
前へ
/51ページ
次へ
「赤ちゃん……できたみたいなの。」 「えっ?」 沙耶からの突然の報告。 妊娠と聞いて俺は考える。 沙耶だけじゃなく、子供まで不幸の道を歩ませることになってしまう。 いっそ全てを捨てて、逃げ出してしまおうか。 愛する人も、新しい命も……。 一度幸せを手にしたら、放したくなくなるに違いない。 俺は、沙耶にこう言った。 「俺は……沙耶に幸せになってほしいと思ってる。お腹の子にも。 でも、俺が父親じゃ、幸せにしてやれないかもしれない。」 沙耶はしばらく黙った後、こう言った。 「私はこの子がいとおしくて仕方がないの。 この子のためなら何だってできるわ。 そしてこの子と私の人生にはあなたが必要なの。」 そう言われてまた少し考えた。 俺の死因はわからない。 突然死んでしまうかもしれない。 だが、いつ死ぬかはわかるじゃないか。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加