寿命払い(short ver)

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その日から人生が変わった。 本、パソコン、ゲーム、DVD、服、車、新しい住まい……欲しいものは何でも買った。 映画だってカードで観れた。 自販機もカードをかざせばボタンが光る。 カリスマ美容師にカットしてもらい、ブランド品で身を固めた俺は、自分に自信を持てるようになった。 就職も決まった。 気楽な中小企業だが、仕事に生き甲斐を感じるフリをするのには充分だった。 友達もできた。 たくさんの人間が俺を取り巻いた。 寿命は減っていった。 俺の生活が潤うのと反比例して、カードの数字は減っていた。 残り60012337。 1億くらい減っていた。 数字が何を表しているのかはすぐにわかった。 寿命を金額に換算したものだった。 あのまま生きていたら、ろくでもない人生だったに違いない。 死は恐くない。 どうせなら太く短く。俺はその機会を手にいれたのだから。
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