雨雲傘

「やぁ、おはよ。」

「雨雲…」

昨日買った新しい折りたたみの傘を右手で鞄になおしながら、いつもの通学路につく。空をみるとどんよりとした雨雲が、空を灰色に塗りつぶしていた。

「雨予報じゃなかったのに。」

まだ新しさが残るローファーを地面に這わせながら、コートのポケットから、赤のスライド携帯を出す。

『メール…なしっと』

こんな海の近くにしかも学校から離れている私の家は、いわゆる都会から見ればカントリーサイド、田舎ということになる。

『不便ではないのになぁ…』

家から5分のところに古い軒下に自転車を止めて帰る。家におくと、道がデコボコ過ぎて乗れない。少し整備のされた国道に出てからのこの軒下を見つけた。