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「今年も銅賞かぁ。」
2チャンネルで吹奏楽コンクールの結果を見ても、もはや驚くこともなくなった。
俺が卒業した次の年のコンクール。その時は流石に銅賞って聞いてびっくりしたけど、四年連続ともなると、もう慣れてしまった。
コメントを流し読みしていると、銅賞よりもびっくりする事が書いてあった。
「福工の顧問は今年定年らしいな。」
「福工の顧問可哀想だな。四年前に定年退職だったら良かったのにな。」
タノさんが定年?そんな話は今の今まで知らなかった。
不意に俺の携帯がぶるぶると震えた。見ると城さんからの電話だった。
「もしもし。」
「武田、俺のやり方は間違ってたみたいだ。結局、田野下先生の最後のコンクールでも銅賞しかとれなかった。やっぱり俺は、誰かの力に頼らないと、なにもできないんだな。」
城さんは泣いていた。電話越しで分かるくらいだから相当なのだろう。
「それは違いますよ。先生じゃなかったら俺達は全国大会なんて行けなかった。あんなに音楽が楽しいなんて思わなかった。そんなに自分を責めないでください。」
俺は少し強めの口調で言った。自分の恩師が弱音を吐いているのを許せなかったからだ。
「ありがとう。そんな事言ってくれるのはお前だけだ。」
城さんは少し落ち着いたようだった。
「なぁ、もう一度だけ、お前の力を貸してくれないか?」
「え…?」
いったい何のことだろうか。
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