七月:定年の知らせ

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「今年は田野下先生の最後の年なんだ。だからもう一度大きなホールで定演を開きたい。その為には、プロである武田の名前を借りるしかない。」 城さんはそう言いきった。 「でも、そんな事をしたら福工吹奏楽部の定演じゃなくなりませんか?」 「お前がOBだから頼めるんだ。定演奏は3月にやる予定だから、考えておいてくれ。」 そうやって電話は切れた。 「俺の名前をって言われてもなぁ…。」 正直戸惑いがあった。確かに俺はプロだけど、俺の名前だけでホールに人を呼べる自信はなかった。 すると今度は別の人から着信が入った。 「もしも…。」 「やっと繋がったし!タノさん今年で定年だろ!今年はレベル5の社員として、知り合いの作曲家に送別の曲を創ってもらうぜ!」 「大州、お前早口すぎ!」 俺は思わずツッコんでしまった。 「てか作曲依頼出来んの!?」 そっちのほうが本当はびっくりだった。 「あぁ。今からお前に頼もうと思ってた。」 「なにぃ!」 「だってお前の曲を自由曲にしてる団体いっぱいあったぜ?」 「そ、それはそうかもしれないけど、てかレベル5関係ねぇじゃねぇか!」 どんだけツッコませるんだよ! 「まぁ、そんなわけで、多分城さんからも話があると思うから。てか俺が城さんに話しといたから。そいじゃまた8月に!」 「ちょっと待てよ!」 しかし電話はすでに切れていた。 じゃあさっきのはそう言うことだったのか。
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