八月:相談

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「ちょっとトイレに行ってくる。」 そう言って俺は逃げるように席を立った。 待ち続ける…なんて格好いい事言っておきながら、俺は迷ってしまったのだ。そして、それが大きな過ちだったのだ。 俺は、エリの事をずっと待ち続ける自信があった…。 彼女と会うまでは…。 プロになって3年、楽団に新入団員が入ってきた。その中に、彼女はいた。 コントラバス奏者だった彼女-吉野由実-と打ち解けるまでに、時間は掛からなかった。そして、彼女から告白された。エリの事も話したうえで、それでも俺と一緒にいたいと…。 最初こそ断ったが、何度も話しているうちに、俺は迷ってしまったのだ。 「本当にエリは待ってくれているのか?」 そして俺は、迷い続けたまま、彼女の想いを受け入れてしまった。 そのまま2年が経ち、態度の変わらない俺に対して、彼女は結婚の話を持ち出してきた。けれど俺はどうしても、あのときの約束が忘れられず、その話を受け入れることができなかった。 数日後、再び彼女と会った時、彼女は原形を留めてはいなかった…。 そんなことを思い出しているうちに、俺は気分が悪くなり、食べたものをすべて吐き出してしまった。 「なにやってんだろうな、俺は…。」
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