夏の始まり

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今までの優希の言動を思い出してみる。 あいつは隠すことが出来ないから、無意識にその子の話をしていたはずだから。 「…分かったかも」 優希が無意識に頻りに出していた名前。 「多分…茜ちゃん、って子だ」 同じ大学の、優希と同じサークルの、一つ年下の後輩。 優希はよく茜ちゃんのことを気にかけていたように思う。 私はそれが気にくわなくて、話も全然聞かなかった。 「茜ちゃん、ねぇ」 「どんな子だか知ってるの?」 「いや知らね」 こんなことになるとは思ってなかったから。 全然茜ちゃんの情報なんてないなぁ。 もうフラれた以上、どうにも出来ないだろうけど。 奪い返すなんて、きっと無理。 優希は想いを貫くタイプ。 だからきっと、もう茜ちゃんしか見えていない。 「もっと可愛く出来てたらなぁ…」 私の小さな呟きに、みんなからの返答はなかった。 .
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