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「てか、お前…まだソレやってんだ。」
鳴海は俺の背中に指を指して聞いてきた。
竹刀だ。
小さい頃から竹刀を握らされて、5歳の頃から剣道と言うものを始めた。
「ん、あぁ。放課後は暇だしな。そろそろ始めないとジィちゃんに怒られる。」
俺は竹刀の入ったケースを優しく触る。
「よく続くよな、12年…だっけ。尊敬に値するよ。」
「そうか?」
別に嫌々で続けている訳じゃない。かと言って楽しい訳じゃない。
家が、少し前まで剣道の道場していたから、自然に生活の一部になっていた。
「門下生は今何人だ?」
「俺。」
「…は?」
「うん。」
そう…道場は潰れた。
少子高齢化と言う現象で子供が減り、加えて、今人気のサッカーやバレーボールに人を取られてしまう始末。
「そっか。頑張れよ。」
鳴海は何を思ったのか、そんな言葉をかけてくれた。
別に気に病んではいない。
少し道場が寂しくなっただけだから。
「なんなら…やる?」
俺は鳴海に聞いた。
「い、イヤだ…アレは、うん。」
即答かよ。
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