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「おーい、なにしてんだぁ?置いていくぞー!!」
鳴海の声だ!
呼ばれた瞬間、全身の筋肉の緊張が解けたのが分かった。
俺は、少女に向けていた首と体を180度一気に反転させ、鳴海の元まで何も考えず走った。
「ハァ!ハァ…っ…ハァ!ハァ!」
誰だアレ、何なんだ。俺なんかしたか?地球外生命体か?あんな子にあんな殺気を向けられる事したか?
いろんな考えが、グルグルと脳裏を走り出す。
「ユッキぃ…どうした?」
「ハァ!ハァ!って、へ…あれ?」
いつの間にか鳴海の元まで来ていたらしい。
「あんな所でボーッとして…って、どうしたんだよ、その汗…。すごい量だな。」
鳴海は、俺の状況を見て驚いている。
そりゃそうだろう。春を少し過ぎた今の季節、汗をかくなんて早々ない。
「ハァ、ハァ。あぁ、ちょっとな…。」
落ち着きがない呼吸を落ち着かせ、ゆっくりと後ろを振り返った。
あの子がいない?
まだ、心臓が暴れている。
足も少し震えているし、悪寒がする。
「ま、いいや。おい!急ごうぜ!遅刻しちまう!!」
鳴海はそう言うと俺の制服の袖を掴み、そのまま教室まで走り出した。
だが、俺の中ではさっきの少女のことがまだ駆け巡っていた。
俺はこの時、思っても見なかった…まさか、これが最後の朝になるなんて――――――
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