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「ねぇツンデレラ、私今日の夜はシチューが食べたいわ」
「シチューですか?…でも、材料が」
「お金渡すから買って来て頂戴。その変わり材料以外のものを買わない事、あと寄り道もしない事。最後に家に帰って来る時間は17時まで」
「17時って…、今は16時過ぎじゃないですか!」
「だから急ぎなさいって。ほら、篭と財布。早くしないとシチューからカレーに変更だからね」
背中を強く押され、無理矢理外に出される。
その強引さはもう慣れたけど、これがあと何年続くのかと思うと、肩が重くなってしまう。
「はぁ……、こんなんじゃ人間嫌いになるって……」
というかもうなってるけど。シンデレラはとにかく材料を買うため、いつも買いに行くお店へと足を運んだ。
しかし、シンデレラがお店に入る度、聞こえてくるのは小さな笑い声。
周りの人達は綺麗な服を身に包み、シンデレラは何度も洗って着ているたった一着の古びた薄汚れた服を着ている。靴は今にも穴が開きそうな革靴。
世間からは浮いている存在だった。周りがどんな目でシンデレラを見ているのかだいたい予想がつく。
“汚い”とか“早く出ていけ”とかゴミを見る視線。そしてそれ以外は“可哀想”とかの同情の視線。……
胸糞悪かった。
「…ただいま戻りました」
材料を買って帰宅する。
家に入った途端、耳に響いてきたのは姉達の何かにはしゃいだ声だった。こちらが帰ってきたのなんか気付かないで。
「どうしましょ~、何を着ていこうかしら」
「これなんかどう?」
「駄目よ、そんな派手派手はこの子には似合わないわ」
何やらドレスを何着るか選んでいるようだった。
黒のシンプルなドレスにするか、薄いピンク色のフリフリの付いたドレスにしようか、姉達はキャーキャーと黄色い声をあげてはしゃぐ。
それなら試着して決めれば?とか思ってみたりしたけど、シンデレラは無視して買ってきた材料をキッチンへと置いた。
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