裏・ツンデレラ

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「あのジーク、俺、アルコールはちょっと」 「安心してください。カクテルといってもこれはノンアルコールなので」 「そうなの?」 「はい。オレンジジュースとパイナップルジュース、レモンジュースを混ぜたカクテルです。爽やかな口当たりで甘くて…女性に人気みたいですよ」 「俺は男なんだけど」 「すみません。飲めない方にも雰囲気味わう事ができるので、これを選んだんですが」 「そ、そう」 店内が少し暑いのか頬を染めてグラスに少し口をつける。 喉がこくんと上下に揺れた。 「あ、美味しい」 「良かった」 「これ、なんて名前なんだ」 「“シンデレラ”です」 「え」 「この名前をみつけたとき、真っ先に貴方に飲ませたかったんです」 「ジーク…あ」 「なんですか?」 「あ、ありが、とう」 「喜んでくれてよかった」 喜んでくれた事に胸が熱くなる。 彼が口にしているのはアルコールははいっていない。だけど頬は赤くてまるで酔っているようにみえた。 どこか色気を漂わせ、理性を狂わせる。 「お待たせしました。それと料理のご注文がありましたらどうぞ」 「ああ、そうだな。じゃあ生ハムと、スモークサーモン。あとはエスカルゴのブルゴーニュ風をお願いしようか」 「かしこまりました」 「なんだか…悪いな」 「私が好きでやってるので気にしないで下さい」 「うん……そのカクテル」 「はい?」 「綺麗だけどなんて名前?」 「“Go To Heaven”」 「“Go To Heaven”?」 「昇天といいます。癖になる味で好きなんです」 「へぇ…」 「気になります?」 「す、少し」 「じゃあどうぞ」 「え?」 「少しだけ飲んでいいですよ」 「で、でも…いいのか?」 「はい。ただ、本当に少しでお願いします」 「?ああ」 訝しげに思いながらシンデレラは昇天を少し口に含んだ………が。 「げほっ!!!かっ、からい…げほっ」 「ああやっぱり」 「やっぱりってなんだよ!!」 「これ、アルコール度数かなり高いんですよ。スピリタスはいってますので。あとはラッテ・リ・ソッチラ」 「ラ…って、何?それ。スピリタスはきいた事あるけど」 「ラッテ・リ・ソッチラ。度数が75で、スピリタスは度数が96。お酒飲めない人があれを口にしたら一発で酔います」 「酔うというか倒れる」 シンデレラは口直しに自分のグラスに口をつけ、一気に煽る。 俺も自分の頼んだカクテルにようやく口をつけた。 この強い刺激的な味は癖になる。
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