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「…い……ん、し……りし…」
遠くで声がするような気がする。
「れ………じょう………きろ……れだ……いとだ」
否、違う。俺の隣で声がしたのだ。
「いいか……き………こえ……ろ…れおん」
「……れ……伶人か?」
ゆっくりと目を開ける。
「おう、黎音、起きたか」
そこにいたのは、案の定件の神主少年であった。
「ここは……神社か?」
未だ焦点の曖昧な目で見回す。それでも一応、ここが畳敷きの和室であり、俺が並べられた座布団の上に横たえられているのだ、と分かるには目も足りていた。
「分かっているみたいで話が早いな」
「だが、何でここに?」
「さっきの俄か豪雨の時、やけに大きな魔力の爆発があってな。気になって調べてみたらお前の家だった」
「で、俺が倒れてた、という事か?」
「ああ」
それだけ言うと、伶人の表情に幾分かの曇りが現れた。
「……まさかお前、何かやらかさなかったか?」
――どうせ、こいつの事だ。言うまでもなくある程度の推測は付いているんだろう。
とはいえ、別に黙っている事もない。思い違いがあってはまずいので、取り敢えず洗い浚い包み隠さず述べていった。
「そうか、やっぱりお前だったのか。厄介な事になったぞ」
「……え?」
「魔法を使い過ぎだ。魔力どころか生命力まで食い込んでいるぞ」
――……何だ、その程度ならば言われなくとも分かってはいる。
そう思っている中、ふと第三者の来る音が聞こえてきた。
「神主さん、起きたの?」
声の主は黒髪おかっぱの、伶人より若い巫女であった。言うまでもなく面識などない。
「……誰だ?」
「あいつか? あいつは谷中結希、最近うちで巫女見習いをやっているんだ」
聞いた俺は、頷いて返す。
「お兄さん、起きたのね。大丈夫?」
「ああ。それと、俺の名は瀬堀黎音だ」
――幾ら何でも“お兄さん”なんて呼ばれるような柄じゃないからな。
曖昧な表情になった俺に、その結希という巫女は更に尋ねる。
「ひょっとして、魔法を使えるの?」
「ああ。どうして分かった?」
『魔力』の単語が会話にあった為に向こうも分かったのだろう、と俺は思っていた。しかし、現実という奴はひねくれ者であった。
「だって、座敷童子だもん、私」
――は?
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