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「なに?」
「……何でもない。
それより、これをホッチキスで留めて」
プリントの束を指さすと、千鶴は、納得いかないのか、ぷぅと頬を膨らまし、それでも、プリントの束を覗き込んで、渋々作業を始めた。
「ねえ、なんでアキちゃんの名前知ってるの?」
パチッ、パチッとプリントを留めながら、千鶴がいきなり口を開いた。
……アキちゃん?
唐突に出てきた名前に、パソコンの画面から千鶴に視線を向ける。
いぶかしむような顔。
「瀬戸さん!何の絡みも無いよね?」
「無いねぇ」
「じゃあ、なんで?」
さっきから、チラチラと俺を見ていたのはその所為か。
不安げに揺れる目で、俺の応えを待っている千鶴を見て、苦笑いする。
何を心配しているんだか。
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