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朝一番に弁護士とともにあなたの大切な社員達にあなたの帰還を報告した。
みな我先にとあなたの出迎えを希望した。そして口々に喜びと労いの言葉を口にした。わたしはつい感極まって、ほんの少しだけ泣いてしまった。
誰かが言った。
『ボスはオペラを観ながらプロポーズするんじゃねぇか!?』
そしてあちこちで、そうだそうだと野太い喜々とした声が上がっていた。わたしは思わず頬が熱を帯び薔薇色染まるのを感じた。男達はそれを笑い、祝福を言葉にしてくれた。
夜になり、わたしはあなたを迎える為に白いシルクのドレスを纏い、髪を結い上げ、ルージュを引いた。
スワロフスキーのビジューをふんだんにあしらった靴を履き、リムジンに乗り込む。
あなたがわたしをデートに誘う際によく同行させた古参の社員を運転手に選び、よく冷えたシャンパンとあなたが好きなカサブランカを座席に置いた。
夜の刑務所に白いリムジンは不思議と似合いであった。係の者に導かれ待合室に通された。
待合室にはもうひとりドレスアップした女が、薄汚れたベンチに座っていた。
ヌードベージュのドレスに赤い靴。
わたしより5つは年上であろう女は赤い爪で、波打つ亜麻髪を弄んでいた。
果たして30分ほど待ちあなたはやってきた!
あなたは両手を広げ、わたしの名を呼んだ。わたしは走り出し、あなたの胸に飛び込む。
あぁ、やっと触れ合えた!
溢れる涙はわたしから言葉を奪う。この抱擁の時が永遠になればいいと願った。
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