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私は、その帽子をはじめ、数多くの装飾品を彼から貰い受けた。総額でいくらと下世話なことを言いたくはないが、相当なものであったことは間違いない筈。仕立ててもらったキャスケットにしろ、代金として彼が帽子屋に手の切れるような紙幣を幾枚も紙入れから出して渡していたのを見たのだ。
当時、私は子供らしい子供であるとは言えず、何かを強請るようなことは稀で、むしろ大人が何か買い与えようとすると遠慮するような性格だったのだが、彼が与えてくれるものは菓子であれ宝飾品であれ、遠慮なく受け取った。彼が呉れるものはどれも魅力的だったし、枢に似合いそうだからなどと時折言って寄越すものは本当に私によく似合った。
いや似合うと言うか、それらを纏うと、私の嗜好に敵う私、理想像としての私に近づくことができるのだった。
彼の私室には私の興味を惹くものがたくさんあった、というのは先に述べた通り。私の知的好奇心は一時も黙していられないのが常だったが、彼は彼の函の中に在るものはその全てに精通しており――貝細工の構造、街灯史、形而上学、未来派運動、世界各地の宇宙開闢神話、設計科学、皇室典範、古代東方音楽等、――訊ねれば字引の如く話してくれた。
彼の講義に耳を傾けていると、ただでさえ天井の高いこの室がますます高くなり、逆に私自身は縮小していくような錯覚に襲われたものだ。そして私は人形のように彼の私室の一部となってしまう。そんな夢想に耽ることも屡々。
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