第1章・綻び

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初めての仕事は、初めて立ち入る廃棄施設だった。 城の敷地の隅の隅。 無論、王子だった頃はこんな場所に踏み込む事は一度たりとも無く、考えてみればあって当然の施設であるが城内に存在した事すら知らなかった。 小さな建物。 元々視力の殆ど無い自分にとって、明かりが無いのは問題ないが、視力を補う為に鼻が利く分、ジメジメした空気と据えた匂いが気分を悪くさせる。 [研究室から出たゴミは、通常の方法では処理出来ないから、一般ゴミとは区別しなければならないの。 カタリナ牢獄という廃墟の井戸に捨ててくるのが仕事よ] 白は気合を入れなおすと、ミーシュの言葉に従って、鍵を外し研究室のゴミ用コンテナを開けた。 すると、中から麻の袋に包まれた大きなものがゴロッと出てくる。 台車に乗せるべく、袋の端を持つも、重すぎて上手くいかない。何度か転がして奮闘するうちに、不意に中身が気になった。 全長170cmあるかないかくらいのモノが2つ入っているようだ。ずいぶん重いが、金属ほど硬くは無い。しっとりしていて僅かに異臭がする。 布越しに触れてみて、嫌な予感は確信に変わりそうだった。 白は厳重に閉じられた袋の口を開けた。
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