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『糞遅い。全く何をしていたんですか?』
研究室に戻るなり罵声が飛んでくる。が、その声も若干弱々しい。
クラウディオは人生初のカゼと思われる症状で寝込んでいた。
「やぁ、すみません」
カイザーはクラウディオの横たわるベッドの端に腰掛ける。そして徐に彼に覆い被さると、秘密を打ち明けるようにコッソリと耳打ちした。
「人形を舞台に据えて来ましたよ」
『ッ…! ……そうですか』
今でも人間との接触に慣れないクラウディオだが、体調不良が影響しているのか激しい拒絶反応を示せず、ビクッと身を竦めただけに終わる。
「これが操り人形の糸です。大事に仕舞っておいて下さいね」
ボビンをいくつか取り付けたような小さな装置を白衣のポケットから取り出すと、カイザーは唐突に布団の中へ手を突っ込んだ。
『!? やめ…ッ』
そして装置を置いてサッと離れる。
リウが作った人形の完成品を、カイザーが設置に行った事は知っていた。
カイザーが人間サイズのモノを運んでいって人間と入れ替える図はさぞ面白いものであったに違いないが、そんな労力など自分はついぞ知らない。
クラウディオは押し込まれたそれをモゾモゾ動いて取り出し、興味なさげに眺めただけだった。
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