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「あたし的にはやっぱ小町ちゃんには赤色が似合うと思うんスよね」
「ふむ。悪くないな。とはいえコイツの雰囲気から考えるに、派手すぎない方が良い。……これなんかどうだろうか?」
「あー、いいッスねーそれ」
「ふははは!完璧な俺様は服装のコーディネートも一流なのだ!小町!貴様もそう思うだろう?」
気分が高まってきたところで奴隷にも言葉を投げかけてみたのだが、相変わらず奴は無反応。口を半開きにさせ、固まっていた。
「……あ、あの、ご主人様……。これは……?」
やがて辛うじて奴隷の口から出てきたのは、そんな言葉だった。どうやら未だに状況が理解できていないと見える。どれだけ愚鈍なのだこの奴隷は。
「見て分からんのか? 服だ、服」
「……そ、それは分かります。……ただ、誰の服……なのですか?」
「お前の服に決まっているだろう阿呆が」
「え」
先程とは少し違った感じで、呆けた表情になる奴隷。
「まさか貴様、あのボロキレを着て過ごすつもりだったのか? 笑わせるな。先ほども言っただろう。あんなものは服とは呼べんと」
「で、ですが、わ、私は……その……奴隷、なので」
「そうだな。だが、それがどうした?」
「いえ、だから、そ、その……。あ、あれ? 私がおかしいの……かな?」
奴隷は何やらぶつぶつと呟きながら、目を回し始めた。
だんまりの次は狼狽か。
まったくもって訳が分からん。
「何にせよ今後貴様の着る服だ。貴様の好みも聞かせろ。意見がないなら俺様と谷村の独断で決める。後で文句は言うなよ」
「小町ちゃんの好みに合わせるのもいいっスけど、あたしの思う様にコーディネートしてあげるのも悪くないかなー。いやぁ盛り上がってきたっスねー坊ちゃん」
「くくく。そうだな、谷村よ」
他人の服をコーディネートするという行為は、どうしてかくも楽しいものなのか。興味深いと共に不思議なものだな。
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