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「ロリコンは皆等しく死ぬべきだと思うんですよねぇ」
見ず知らずの幼女に、突然こんな言葉を投げかけられたら、世の人々は一体どんな反応をするだろうか。
喜ぶか。
驚くか。
無視するか。
それとも心配するか。
色々選択肢はあるだろうが、残念ながら俺は、"絶句する"という実にありがちで詰まらない反応をすることしか出来なかった。
「…………」
「聞こえていますか、お兄さん。スズは、貴方に話しかけているのですよ?」
身を焦がすような熱い日差しが降り注ぐ――季節は夏。
俺を含む高校生諸君は、皆夏休みを満喫しているであろう8月の上旬。
場所は、某大学病院。
受付を済ませ、ロビーにある自販機の隣のベンチに座って休憩していたところに起こった事件(?)だった。
いつの間にか。
本当にいつの間にか、俺の隣には見ず知らずの幼女が座り込んでいたのである。
「……?」
「首を傾げないで下さい」
「……」
「周りを見渡したって誰もいませんよ。スズは貴方に話しかけているのです」
「……?」
「そうです。貴方です」
「…………」
「何度も言わせないで下さい。貴方ですってば」
「…………」
「…………」
俺はすぐさまベンチから起立。
足早にその場を緊急離脱―――、
「無言で立ち去るとか、お兄さんは一体どういう神経をしているんですか。待ちなさい」
ガッと服の袖を掴まれてしまった。
相手は幼女。力任せに振り払うことは可能だが、そんなことをすれば多方面で問題になってしまうに違いない。
チクショウ。
「……何だ、お前は」
逃避は不可能ということで、仕方なく謎の幼女に声をかける。
「話しかけられても応えず、それどころか一目散に逃げ出そうとした人が、更にそんな態度を取りますか。呆れるを通り越して感服しますね」
「生憎、昔から面倒事が嫌いな性分でな。お前からは、そんな雰囲気がした。だから逃げようとしたんだが……まったく残念だ」
「懇切丁寧でとっても失礼な説明どうも」
「で? 結局お前は何なんだ?」
「何なんだと言われましても。スズは単なる一介の幼女ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。良かったですね。こんな可愛い女の子に話しかけて貰えて」
「あぁ、最高の気分だ。それじゃ」
「待てって言ってんですよ」
華麗な流れで再び逃避を試みたが、失敗。ダメか。
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