2666人が本棚に入れています
本棚に追加
「お兄さんは本当に良い度胸してますね。もしかして只のコミュ障なんですか?」
「面倒事が嫌いなだけだと言ってるだろうが」
「では、これを機にその嫌い分野を乗り越えて下さいよ。さぁ、早くこちらへ戻りなさい」
そう言って、幼女は自分が座っているベンチの隣を指差す。
座りなおせということなのか。
ざけんな。御免被る。
……と言いたかったのだが、よくよく見渡してみると、俺とこの幼女に周囲の視線が集まっていることに気が付いた。
こんな中で無理な行動をしたら、俺が社会的ダメージを受ける可能性大。
数秒の熟考の末、渋々幼女の隣に腰を下ろす。
「ようやく座りなおしてくれましたか。結構です」
「…………」
満足そうに頷く幼女。
そんなコイツを改めて良く見てみる。
短めの黒髪ツインテール。
10歳前後と思わしき小柄な体格。
これだけで見れば普通の幼女なのだがしかし。
こいつは、眉間に軽く皺をよせ、常に不機嫌そうに見える、お世辞にも良いと言えない目つきをしていた。
所謂ジト目というやつか。
何故こんな目つきをしているのか知らないが、そのせいで可愛らしい顔が残念な雰囲気になってしまっている。
つくづく意味が分からん。
何者なんだこの幼女は。
ピンク色のパジャマ姿を見る限り、この病院の入院者だとは思うが。
「そうですよ。スズはここに入院中の身なのです」
「…………」
驚いた。
最近の幼女は思考を読めるのか。
「お兄さんが分かりやすい顔をしているだけですよ」
「……そうなのか。よく無愛想と揶揄されるんだが」
「あぁ、分かります分かります」
――まぁ、無愛想だからと言って、表情が読みにくいわけではありませんが。
と幼女は肩を竦める。
最初のコメントを投稿しよう!