オレ+ドレ

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おかしいな。 またしてもメイドにあるまじき発言が聞こえたぞ。 「谷村」 「気のせいじゃねーよ」 マジか。 というか、多分これまでも気のせいじゃなかったと思うが。 「いや、待て、谷村」 「待てるわけねースよ。つーか、本当に買ったんスか、坊ちゃん」 「無論だ。この俺様が冗談を言うように見えるとでも?」 「うるせーよ。今すぐ返品してこい」 「既に即金で支払ったから不可能だな。それに、売人はその金で今頃海外にでも高飛びしてるだろう」 「救いようのねークソ野郎だなホント」 「谷村、いくら何でもリミッター外れ過ぎだぞ」 雇い主相手の口調からかけ離れ過ぎだからな。場合によっては裁判に持って行けるレベルになっているからな。 一方、当の本人である谷村はというと……。 大きく舌打ちをして、実に不機嫌そうに、壁に煙草を押し付け鎮火させながら一言。 「奴隷を買うとか、脳みそ腐ってんじゃないスか」 ここまで来ると一周回って清々しいな、このメイド。 「まさかここまで怒られるとは思ってなかった」 「怒るに決まってるじゃないスか。んな無駄遣いに余計な金回すなら、あたしの給料あげやがれって話スよ」 「む? 貴様が怒ってたポイントって、そこなのか?」 「あぁ? それ以外に何があるんスか?」 「倫理的観点とか、道徳的観点とかかと」 「んなモン犬にでも食わせとけばいーんスよ。……てか、表沙汰になってないだけで、日本の裏社会には奴隷云々ってのは結構蔓延ってるもんスからね。坊ちゃん程の金持ちが今更奴隷を買ったところで、驚くことも怒ることもねースよ」 「流石は俺様のメイド。実にドライだ」 「ただ、あたしの給料になるはずだった金を無駄遣いしたのは殺したくなるほどに腹立たしいっス」 「いや、別に貴様の給料になるはずの金じゃなかったがな」 「坊ちゃんの金は全てあたしの金っスよ」 その理屈はおかしい。 「まぁ、その辺は臨時ボーナス出しておいてやるから許せ」 「流石はあたしの雇い主。金の羽振りがいいっスねー」 「さっきから貴様は雇い主に対する態度を逸脱していたがな」
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