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しかし谷村は、俺様のその突っ込みは無視すると、新しい煙草を取り出し、火をつけた。
「――で。どっちにしろ、買っちまったもんは仕方ないとして……その奴隷とやらは今どこにいるんすか?」
「とりあえず、隣の部屋に待機させている」
「待機て」
「一応、谷村にも披露しておきたいからな。この部屋に連れてきてもらえるか?」
「あー、はいはい。了解ス」
態度は問題だらけだが、基本的にメイドとして俺様の命令は素直に聞いてくれる谷村。
彼女は煙草を咥えながら、実に気怠そうに、俺の自室から出て行った。
◇ ◇ ◇
そして、ソファーに腰かけ、待つこと数分。
俺様の自室の扉が開かれ、谷村が戻ってきた。
「連れてきたっスよー。渋るもんだから大変だったスけど」
そう言って肩を竦める谷村の後ろには――成程、確かに。
生気のない虚ろな表情を浮かべている一人の少女が立っていた。
今にも折れてしまいそうな、細く小柄な体躯。手入れの行き届いていないボサボサの髪。所々が破けている、まるでただの布キレのような服。
どこまでも汚らしいその姿は、まさしく俺が買った奴隷少女に間違いなかった。
「ふむ。ご苦労、谷村。――おい、貴様」
谷村に労いの言葉をかけた後、奴隷少女へと声をかける。
「…………」
「返事をしろ」
「……っ。はい……」
蚊の鳴くような弱々しい声だな。腹立たしいが――まぁ、いい。
「こいつまでも入口に突っ立ってないで、こっちへ来い」
「……はい」
ふん。悪くない。
しっかり自分の立場というものを分かっているようだな。
素直に、ソファーに座る俺のもとまで歩み寄ってきた奴隷少女を見据え、言葉を続ける。
「俺様の名は神宮寺隼人。知っての通り、奴隷として売りに出されていた貴様を購入した人間だ。つまり貴様はこれより、俺様の奴隷。俺様の――所有物だ。分かっているな?」
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