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「……はい。承知……しています」
震えた声で、今にも泣きだしそうに頷く我が奴隷。
「分かっているなら良い。……貴様、名は?」
「…………」
「ないのか?」
「……伊藤小町(コマチ)……です」
「小町か。年はいくつだ?」
「16……です」
「ふん。見た目通りガキだったか。難儀なものだな」
しかしこれもまた人間社会の縮図と言ったところか。所詮この世で物を言うのは金に過ぎない。
金のある俺様が高いところから愚民を見下ろし、金のないこの女が醜く地べたを這いずり回る。同じ生物なれど、立場には天と地の差がある。
単純故に残酷なシステム。
世の中は決して優しくはないのだ。
「さて小町よ」
っふ。俺様としたことが。
そんな御託は今はどうでも良いことだったな。
今俺様がすべきこと――それはせっかくの奴隷を弄び悦に浸ることだった。
「喜べ。俺様が早速記念すべき最初の命令を貴様に下してやろう。謹んで受け入れるがいい」
すると我が奴隷はビクリと肩を震わせ目に涙を浮かべた。その表情は病的に青褪めている。
怯えているのか。
くくく正直な奴め。それでこそ命令のし甲斐があるというものだ。
「そうだな――まずはその邪魔な衣服を脱げ」
「……ッ」
「おっと。そのボロ雑巾のような布キレが果たして衣服と呼べるかどうかは甚だ疑問ではあるがな。はっはっはっは!」
流石は俺様。ユーモアセンスに溢れたジョークだ。
高らかに気持ちよく分かっていたのだが……しかし。我が奴隷は一向に動きを見せない。
「何をしている。早くしろ」
「…………」
「おい」
「…………い、嫌、です」
返ってきたのは、弱弱しいか細い声。拒絶を意味するそんな言葉だった。
「……何?」
すぐさま笑いを止め、鋭い視線を奴を射抜く。奴隷はより一層怯えたように肩を震わせた。
「どうやら貴様はまだ立場が分かっていないようだな。貴様は既に俺様の奴隷――所有物だ。故に拒否権など存在しない。物は黙って俺様の言うことを聞け。口応えはするな」
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