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「谷村。この常識知らずを脱衣所まで連れて行って風呂に叩き込んでやれ。何をしでかすか分からんから、そうだな、貴様も共に入浴を済ましてこい」
「あー、はいはい了解ス」
ヒラリと片手を挙げて返事をすると、谷村は未だに困惑しているらしい奴隷のもとへと歩み寄っていった。
というか、いつまでおろおろしているのだあの奴隷は。見ていてイライラする。
「つーわけで……小町ちゃんだっけか。一緒にお風呂行くっスよ。この家は無駄に広いから逸れないようにちゃんと着いておいで」
「え? あの、えと、その」
「あぁそうだ。あたしは谷村。あの変人坊ちゃんのお付のメイドっス。よろしく」
「あ、は、はい。よろしく……お願い……します」
「やー妹ができたみたいで嬉しいねー。ほらほら!さっさとお風呂に行くっスよー。体の隅々までお姉さんが洗ってあげるから」
ニコニコとある意味不気味なほどの笑顔を浮かべながら、谷村はそのまま奴隷の背を押しながら部屋の外に出て行った。
ふむ。あれほど上機嫌な谷村を見るのは久しぶりだな。あいつはいつも俺様の前では仏頂面だから、今のは非常に貴重な一面だ。
「……それにしても」
一体何だったのだあの奴隷は。
普通"服を脱げ"と言ったら風呂に入ってこいという意味に決まっているだろうに。
にも関わらず、急に俺様の部屋で脱ぎだすとは、一体何をするつもりだったのか甚だ疑問ではあるな。
まったく。
俺様は一人となってしまった自室の中で軽く嘆息を漏らしつつ、奴等が入浴を済ませるのを待ったのだった。
◇ ◇ ◇
身体から湯気をあげながら谷村が部屋に戻ってきたのは、時間にしておよそ一時間後くらいだろうか。
「お待たせしましたー坊ちゃん」
「遅いぞ谷村」
えぇい。
女の入浴というものは何故こんなに時間を有するものなのだ。待っている方の身にもなれ。
「して、谷村。俺様の奴隷は何処だ」
入浴後にも関わらず、変わらずメイド服を着用している谷村を見ながら問いかける。
「あー、小町ちゃんならそこに」
谷村が指差す先には、部屋の外からオドオドとこちらを覗いている奴隷の姿があった。
「何をしている。入れ」
「……は、はい」
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