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結局、その後我が奴隷の服装を決めるまでに丸1時間程かけてしまった。
我ながら熱中し過ぎてしまったが、その分納得のいく服を選ぶことが出来たと自負している。
「ふむ。やはり我が奴隷には赤色が正解だったようだな」
「いやーバッチリ似合ってるスよ、小町ちゃん!」
「……あ、あり、ありがとう……ございます」
先程までのボロ布から一転。
綺麗な赤主体の服に身を包んだ奴隷は、どこか恥ずかしそうに謝意を述べた。
そして落ち着かない様子のまま、忙しなく自分の服を眺めている。
「あ、あの……ご主人様」
「何だ?」
「よ、よろしいの……ですか? こんな素敵な服を着させて頂いても……?」
「構わんと言っただろう。それよりも、もうこんな時間か」
壁時計に目を向けると、時刻は既に午後8時を示していた。
まったく奴隷に入浴をさせたり服を恵んでやったりと、時間を割き過ぎてしまった。
完璧人間たる俺様といえど、流石にこの時間にまでなると腹が減る。
「少し遅くなったが、夕食にするとしよう。おい谷村」
「はいはい。そうくると思ってさっきコックに連絡を取っておいたっスから。たぶんすぐに食べられるよう準備してくれてるはずっスよ」
「うむ。ご苦労」
ならばすぐにでも食堂に向かうとしよう。
そう考え、部屋の扉へと手をあけた俺様だったが、その場から動こうとしていない我が奴隷の姿が目に映った。
「おい、何をしている。貴様も来い」
「え?」
「早くしろ」
「は、はい」
まったく。何故一々命令くれてやらねば動こうとしないのだ。手間がかかる。
奴隷は驚愕した様子で目を見開いていたが、俺がそのまま歩き出すと大人しく後ろを着いてきた。
そうして俺と谷村、奴隷は3人で我が家の食堂へと向かった。
◇ ◇ ◇
食堂に到着してみると、丁度コックがテーブルの上に温かい食事を並べ終えているところだった。
流石は俺様の専属のコック、素晴らしいジャストタイミングだ。
「ご苦労、下がっていいぞ」
「…………」
そう指示を出すと、コックはペコリと一礼してキッチンの方へと戻っていった。
相変わらず寡黙な奴だ。谷村も少しは奴を見習って悪態を減らせばいいものの。
「何か失礼なこと考えてなかったスか、坊ちゃん」
「何のことだ。それよりも冷めないうちに食すぞ。貴様等も座れ」
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